2012年8月31日金曜日


その異変に、最初は誰も気付かなかった。
付近に居た者は、ただの気象変化だとか
気のせいだろうと、気にも留めなかった。
遠くで、異変を偶然にも目撃できた者も
人型の雲がある、という認識でしかなく、
そこにある危機を微塵も感じてなかった。
雲と霧の境目はどこにあるのだろうか?
最初に疑問を投げかけたのは誰だったか。
「形を持った雲が、地に足を下ろした」
言葉にすれば、これだけの事でしかない。
それでも、その言葉の持つ意味は重大だ。
地に足跡を付ける雲など誰が想像したか。
気象庁の発表に依ると、あの雲の巨人は
いまだ質量を増加させ続けているらしい。

「この写真なんてどう、儚げじゃない?」
「普段の言動を知ってる身とすると……」
「おしとやかで、かつ、たおやかでしょ」
「……えっ!」「……えっ?」
「えーと、まずは漢字を使ってください」
「もしかして遠回しにバカにされてる?」
「それじゃ、意味を調べてみてください」
「直接だったら良いと思ったでしょう!」
「まだ間接的ですよ。言葉だけですから」
「まるで私が手を出すみたいな言い方ね」
「出してる! 今まさに! 痛い痛い!」
「物を投げてるから、まだ間接的なのよ」
「それのどの辺りに上品さの欠片が…?」
「もうカケラしかない言い方は酷いわね」
「それじゃ、撮影のときは何を思って?」
「……。夕飯は何にしようかなー、って」
「正直に喋っちゃう辺りは可愛いですね」