春幻
「絵本から抜け出したような」なんていう、
馬鹿げた表現が、でもなぜか、自然にそう、
思わせるような、何か変わった格好をした、
美しい女性を、目の当たりにしてしまった。
もちろん、周囲を考えれば不自然なのだが、
不思議と、そんな違和感を抱くことはなく、
さも当たり前のように、見ることができた。
僕は、と言えば、特別に何か行動を起こす、
という訳でもなく、奥手な性格も手伝って、
ただただ、傍観しているのが精一杯だった。
こちらの視線に気づいたのでだろう彼女は、
まるで、見られたこと自体に驚いた表情で、
その場から消えて、居なくなってしまった。
ここで初めて、彼女がどういう存在なのか、
そして、自らの行動力の低さを、理解した。
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